2014年1月16日木曜日

ラフマニロフを聞きながら

毎日寒い日が続きます、ご自愛下さい。

正月の、とある夕刻、閉店後のWalton Gardenである。場内の灰皿を掃除しようと半周ほど回ったある灰皿、吸いがらと空缶の間に首をのぞかせた小瓶が1本、Vodkaと書かれてある、ポッカではない、ウオッカだ!冷える体をこいつで温める、当然帰路に運転はしておられないだろうが、なかなか粋な方であると思った。イヤホンで音楽なぞお聞きであったなら、それはチャイコフスキーではなくきっとラフマニロフだっただろうなぞと後半の半周で想像した。

ロシアとイヤホン、強烈な思い出がある。この稼業駆け出しの頃、宮内庁ご用達の築地の仲買から、宮中晩餐に提供する料理の前菜としてアマゴの稚魚の注文があった。古くより京懐石では好まれていたが、関東圏としてはヤマメの方がふさわしいのではないかと提案し、その稚魚を納品した、パーマークが美しいトビキリのヤツだった事を記憶している。来賓はゴルバチョフ大統領だった。未熟な小生は、その仲買の担当者に、このヤマメというマス類は日本に固有に生息する種である事、伴う食文化や漁業も古来より根付いている事を献立表に盛り込んだらどうかと進言した。日ソ間でサケマス漁業交渉が盛んな時代だった。

願いは届かず次の朝、ライサ夫人が築地市場を訪れる事を知り、当然出向いた。夫人から数メートルの距離にいた小生は屈強な男達の鋭い視線を強く感じる事となる、夫人の警護をするSPである。ヤツらはKGBなのか、冷戦時代を象徴するKGBの猛者、彼らの耳にもイヤホンがあった。

そんな関係のヤマメと小生、釣人の及ばない関係であります。小生にとってそんなヤマメ、今週末もたっぷりとご用意しております、イヤホンを付けてご来店ください。