2014年10月29日水曜日

3連休大放流! 

いよいよ11月を迎えます、朝夕の冷え込みもよろしき感、今期の企画第一弾をご案内します。
ターンオーバー等の池水のトラブルも生じにくい時節となりましたので、釣池の魚影を濃くしようと思い、養殖業のメンツとミエを背負って1日300㎏の大小のニジマスをこの連休に用意しました。釣れるか否か、受け手様のご技量による所は多大であります。

今回の放流魚群には、生エサを与え続けた群が多く混じっています。その生エサの正体はアユであります。半端に残った20㎝程度のアユを40㎝級のニジマスに与えてみました。初日はアユが大きすぎて戸惑った様子がありましたが2日目に大きな変化が。顔が違う、目付きが違う、飼いならされた養殖魚とは思えない研ぎ澄まされた眼、小生にはそう映りました。乾燥したペレットしか食べた事のない連中にしてみれば官能の捕食であったに違いない、センベイとレアなステーキ程の差があるはず、ドテッ腹に喰らい付き、横取りに来る仲間を尾びれで蹴散らし、勝ち誇った様に泳ぎながら咥え直して頭部から飲み込む、マスがマスである事を自覚した瞬間であります。野生を取り戻したヤツラの釣池での活躍はどうであろうか、動物学者アドルフ ポルトマン曰く「動物の行動は環境によって拘束され、本能により保証されている。」

春先にはニジマスを軽視したアユ養殖を行っていましたが、時節が変わればアユにだって過酷な運命が待っていた訳であります。諸行無情、盛者必衰のコトワリの感。

2014年10月23日木曜日

ライトリッツを超えて

台風達も去りいよいよ秋本番の感、マス類の管理釣場にも良き時節の到来であります。
当店は先月中旬に今期の再開をいたしましたが、春先からの過酷なアユ養殖で心身に疲弊をした小生には、このコラムを更新する余力が不足していました。しかし約1ヵ月の充電期間を経てやっと平安を取り戻し、これからのトップ シーズンに向けて意欲に満ち溢れています、からまわりをしない様にと怪訝な家人をよそにであります。

ニジマス養殖の入門書の給餌作業の編に必ず出てくる表があります。最も効率のよいエサの与え方を記した表で、縦軸に飼育水温、横軸に平均魚体重、交わった所に給餌量を百分率で示しています。例えば水温10℃で飼育している約100gの魚体にはその3%のドライペレットを与えよと述べ、ライトリッツの給餌率表と呼ばれています。それはバイブル的な表であり、多くの養殖業者がこれを基本に給餌しており、数値化されたニジマスの完全養殖の規範であります。
今期すでに当店にご来店のお客様にはご体験の事と存じますが、メインポンドに放流している約40㎝のニジマス、極めて高い体高が特徴であります。尋常ではないトルク、ネイティブをヒットした感があると好評をいただいています。この群は当店に隣接する当社の養殖場で小生が発眼卵から飼育した群であり、パワーの根源は上記給餌率表を無視した給餌に始まります。それは数値を無視した飽食給餌、喉もとまでペレットを詰め込んだ感の与え方で、隔日で行います。そして水車による水流の強化、通常の飼育では飼料効率を高めるためになるべく水流を抑制し、運動量を減らす事に傾注します。ここではその逆を行ってみました、魚粉配合率が高い高タンパクの餌を飽食させ激しい運動をさせる、経済的には無駄ばかりの飼育でありますが、仕上がった魚体は釣人のみならず業者をもってしても得心していただける事と思っています。真贋の程はWalton Garden メインポンドにて。

業界では生産物の不足が危機的な状態にあります、ニジマスが足りないのです。各釣場様も品薄、魚価高に困惑されているはずです。小生もライトリッツに従って並のニジマスの生産に特化すればウハウハの事となるのですが、釣場の主役であるニジマスの質にはあえてこだわって行きたいと考えています、ある業界とは違ってウチワやワインごときではごまかしが効かない業界であります。