2012年1月12日木曜日

中年は荒野をめざす(旅の宿から)

さらばウォルトンと言う事で、年末年始で疲弊した心身に平安を取り戻すため一人で旅に出ています。山形は赤倉温泉、なじみの旅館でありますが、何と昨日からこの冬一番の寒波、大地は白銀。出迎えたおカミのあきれ顔をよそに、小生は満面の笑み、平素とは違う別世界に身をゆだねる事が目的と息吹く。しかし関東平野で温められていた老体には酷な外気、館外は危険と判断、浴衣に紺色のドテラをひっかけ、手ぬぐいをぶら下げて風呂へ、芭蕉も立ち寄ったと言う名湯を浴びる、折りたたんだ手ぬぐいを頭に乗せて露天風呂へ、普段の無天風呂とは別物、オヤジの至福の時、しかし心中は早や夕食に有りと足早に部屋へ。

人一倍人間嫌いの小生は、旅館においては必ず部屋食と決めている。「お夕食は○×の間でご用意しております」なぞと合理化を隠ぺいした慇懃無礼な旅館には絶対に泊まらない。隣のヤツラが不快に感じるのであります。先附の前に煮物を食べるやつも気になるし、稚拙な内容の会話も耳触りだし、騒々しい子供がいる事もあるし、それを叱らない親なぞを見かけると血圧が高くなる。かくして今夜は一人で雪見酒、何も言わずとも好みのビールが添えてあるし、いい頃あいで熱燗が運ばれてくる、抜群のタイミングと言うより人嫌いの小生を仲居さん達は避けているのだろうと推測する。

酒が進み浴衣がだらしなくなって来るのと反比例して心身はフツフツと燃え上ってくる、細胞のヒダの隙間まで入り込んだ美酒は明日への活力を導いてくれるはず、希望多きはずの未来に乾杯をしなければいけない、今夜はここまで、さてフロントに電話、「熱いヤツもう一本」。